感覚統合とは?重視する3つの感覚と支援方法
私たちは、外部からの情報を「感覚」によって取り入れ、整理し、まとめることによって、その環境とうまく関わることができます。
例えば、人とコミュニケーションするような場面においては、「視覚」によって相手を、「聴覚」によって話の内容に耳を傾けることによって、やり取りができるでしょう。
しかし、感覚統合がうまくいかないと、周りの騒音が気になってしまったり、隣の子に目が向いて集中できなくなったりして、落ち着きがない子のように捉えられてしまいがちになります。
ここでは、子供のこのようなトラブルを改善する「感覚統合」とはどのようなものなのか、その支援方法についても詳しくお伝えしていきましょう。
感覚統合とは?
人には、『五感』と呼ばれる感覚を持っており、
- 視覚(物の色や形をみて理解する)
- 聴覚(音を感じ取る)
- 味覚(甘味や酸味、塩味、苦味、うま味を感じ取る)
- 嗅覚(においや香りを感じ取る)
- 触覚(物に触れることで物の識別を行う)
といった自覚しやすい感覚があり、さらに、
- 前庭覚(傾きや揺れなどを感じ取る)
- 固有覚(位置や力加減、動きを感じ取る)
といった2つの自覚しにくい感覚があります。
これら7つの感覚は、赤ちゃんがおなかの中にいるときに備わり始め、生まれてから成長と共に互いに連携しながら発達していくことが知られています。
私たちが人とコミュニケーションを楽しんだり、身体を使って運動したり、道具を使って作業できるのは、脳に入ってくるさまざまな感覚を無意識のうちに整理し、まとめることができる『感覚統合』がうまくいっているからなのです。
感覚統合で重視する3つの感覚
「触覚」「前庭覚」「固有覚」といった3つの感覚は「基礎感覚」と呼ばれることもあり、日常生活におけるさまざまな活動において重要な役割を担っています。
しかし、これら3つの感覚にアンバランスが生じると、さまざまな場面で気になる行動が見られるようになります。
「触覚」がアンバランスの場合であれば、
- 何かにぶつかっても平気でいる
- 腕を傷つけるほど噛んでしまう
- 人に触れられると嫌がる
などといったことがあります。
「前庭覚」がアンバランスの場合であれば、
- 姿勢がうまく保てない
- 身体をいつも動かしている
- 頭を傾ける姿勢を嫌がったりする
などといったことが見られます。
「固有覚」がアンバランスの場合であれば、
- 細かな動作が苦手
- 文字がうまく書けない
- いつも力んでしまう
といった動作を感じるでしょう。
そのようなことから、感覚統合においてはこれら3つの感覚を重要視しているのです。
感覚統合が成熟していないと…
感覚統合が成熟していないと、情緒や対人関係、学習、コミュニケーションなど、さまざまな場面で問題が生じます。
そのため、感覚統合にアンバランスが生じているのかどうかは、日常的な観察や検査などによって知ることができます。
例えば、日常的な場面においては、大きく揺れることを嫌がったり、身体の痛みに気づかなかったり、箸の使い方ができないような細かな運動が苦手など、さまざまな行動を観察することによってわかります。
また、必要に応じて感覚統合の検査を行うことによって明らかにすることも可能です。
感覚統合の支援方法
感覚統合の支援方法としては、「触覚」「前庭覚」「固有覚」といった3つの感覚を遊びながら繋げていき、適切な行動ができるように導いていきます。
楽しいと思える活動で、子供たちから「やりたい!」を思えるもので、「うまくいった!」と実感できることを支援方法に取り入れています。
触覚がアンバランスである場合、服の素材や襟の具合などに違和感やこだわりを見せることや、靴下や帽子の着用を極端に嫌がるようなことがあります。
そのため、心地いいと感じるスポンジなどで撫でてあげたりして、砂場遊びや水遊びなどで感覚を養うようにします。
子供の意思で触ることができるため不安は少なく、楽しんで取り組むことができます。
お友だちを強く叩いてしまうような子には、相撲ごっこやツイスターなど、身体を使う感覚を実感できる遊びが有効でしょう。
目的意識を持って取り組め、お友だちとの関りも楽しめます。
さらに、爪や鉛筆を噛んでしまうような場合には、口の中の感覚を養うために、シリコン製の「チューイー・チューブ」を噛むなど、グッズを活用することも取り入れています。
前庭覚や固有覚に対する支援方法は、バランス感覚や筋肉・関節の運動感覚を養うために、心地よく感じられる揺れや刺激が有効です。
椅子に座った姿勢が崩れやすいような場合には、バランスボールやブランコなどを使った活動を取り入れています。
ボディイメージを養うことができますのでおすすめです。
感覚統合の支援方法まとめ
感覚統合に対する支援方法についてお伝えしました。
身体に特別な疾患が見られないにもかかわらず、お子さまの感覚統合の能力が正常に働いていない場合は、感覚統合にアプローチすることによって正常な感覚を取り戻すことができます。
また、今回ご紹介した支援方法も実践してみてくださいね。